網膜色素変性
網膜色素変性症とは
網膜色素変性症は、眼の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる遺伝性の病気です。この病気は約4000人~8000人に1人発症するといわれています。成人視覚障害原因の病気で、緑内障、糖尿病網膜症に次いで3番目に多い病気です。遺伝性の病気ですが、約半分の患者さんは親族に同じ病気の方はいません。しかし、家族の中で複数、網膜色素変性症の方がいると発症する確率は高くなります。
網膜色素変性症の症状
3つの特徴的な症状があります。
- 暗いところが見えにくい(夜盲)
- 視野が狭くなる(視野狭窄)
- 視力低下
初期症状は暗いところが見えにくいこと(夜盲)から始まり、20歳までに発症することが多いといわれています。ごく初期の段階では、薄暗いところが見えにくいことや、暗いところに長い間いると、目が慣れてものが見えるようになる現象(暗順応)の低下だけであるため、なかなか日常生活の中では気づきにくいです。さらに病気が進行すると、視野が狭くなります。更に進行すると視力障害が発症します。視野が狭くなり、視力が低下すると日常生活に支障をきたすようになり、違和感を自覚し受診する方が多いです。
網膜色素変性症の原因
網膜色素変性症の原因は、視細胞の遺伝子によるものといわれています。この病気に関わる遺伝子はたくさんあり、解明されていない遺伝子も多くあると予想されます。
網膜色素変性症の治療
残念ながら、根本的な治療や有効な薬はありません。しかし、治療法の開発に向けて全世界で研究が盛んに行われています。近い将来有効な薬が出てくるだろうと予測されています。治療薬ではありませんが、ビタミンAやDHA、ルテインは進行を抑制するといわれています。また夜盲や暗順応の低下といった症状を少しでも和らげるため、アダプチノールという内服薬を処方することもあります。
治療ではありませんが、「残っている視機能を十分に使って生活の質を上げる」取り組みとして、ロービジョンケアという方法があります。字を見えやすくするルーペや拡大読書器、まぶしさを和らげる遮光眼鏡を使用することがその代表的な方法です
院長コメント
網膜色素変性症と診断されると、とても不安に思われるかと思います。遺伝性の病気であるため、たくさんの不安が出てくると思います。病気を正しく理解し、ご自身の状態を把握できるように丁寧にご説明いたします。
当院での網膜色素変性症の治療
網膜色素変性症は治療法がないので眼科に通院する必要はないと思われている方もいるかもしれません。確かに治療法はないのですが、眼科に定期的に通院した方がよい理由が二つあります。一つは、現在の見え方をご自身や家族が認識し、進行しているのかどうかを理解できる機会になります。障害者手帳を適切に申請できているかどうかも確かめることもできます。もう一つは、合併症を見つけるためです。網膜色素変性には、白内障や眼の中心(黄斑部)の病気が合併しやすいことがわかっています。これらの合併症は、治療することができるものもあります。従って、定期的な診察で合併症を早く見つけることは、予期せぬ視力低下を防ぐために重要です。