顔面神経麻痺
顔面神経麻痺とは
顔面神経麻痺とは、脳神経の1つである顔面神経という神経が何らかの原因で傷害されることによって、表情を作ることができなくなる病気です。1年間で、10万人あたり50人ほどが発症するとされています。30代~60代ぐらいの働き盛りの人に多く、突然顔の半分が動かなくなったり、飲み物を飲もうとすると口の端からこぼれたり、瞬きができなくなり目が乾いて痛くなったり、味覚が鈍るといった様々な症状が出現します。
顔面神経麻痺の症状
口や目を閉じたり笑ったりする顔面の筋肉を顔面表情筋といい、約20種類あります。その筋肉の動きが麻痺してしまうことで様々な症状がでます。
①目を閉じられない
②目が乾くため、目が痛む
③涙の減少
④眉が下がる
⑤額に皺を寄せられない
⑥口から水が漏れ出る
⑦味覚低下
⑧しゃべりにくい(構音障害)
単純ヘルペスウイルスが顔面神経とともに内耳にも炎症を起こすと、「難聴」「耳の詰まった感じ」「耳鳴り」「ふらつき」「めまい」などの症状が現れます
顔面神経麻痺の原因
顔面神経麻痺は、脳腫瘍、脳梗塞、脳出血、そしてヘルペス・水痘・帯状疱疹ウイルスの感染など、さまざまな病気や外傷で起こりますが、検査をしても原因が見つからないものをベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)と呼びます。
顔面神経麻痺で最も多いのは、特発性(原因不明)の末梢神経障害であるベル麻痺で、顔面神経麻痺の約60~75%を占めます。ほうれい線の溝が無くなり、口角が下がってしまうため、食物(特に液体)が口から漏れるという訴えが多く聞かれます。
次に頻度が多いのはハント症候群で、約20%を占めます。これは、耳周囲に生じた帯状疱疹による炎症が顔面神経に波及し麻痺を起こします。難聴、耳鳴、めまいを伴うことがあります。ハント症候群は、疲れやストレスで免疫が落ちると原因ウイルスが活性化し神経を障害するといわれています。
顔面神経麻痺の治療
まず、顔面神経麻痺の原因を調べます。顔面神経麻痺は原因に応じた治療をなるべく早期に開始することが大切です。
特発性であるベル麻痺は自然経過でも70%は完全に回復し、80%以上は1~2ヶ月以内に完全回復するといわれています。ベル麻痺の治療はステロイド剤が基本ですが、抗ヘルペス薬の効果が期待できる疱疹性帯状疱疹とベル麻痺の区別は発症初期には難しいことがありますので、少量の抗ヘルペス薬の内服を勧めることがあります
ハント症候群には抗ヘルペス薬をできるだけ早い時期に内服していただくことが重要です。ハント症候群は自然治癒するのは約40%でありますが、発症3日以内にステロイド薬と抗ウイルス薬の併用療法を行うと治癒率は75%にあがるといわれています。
顔面神経の多くが損傷されている場合、お薬での治療は難しいことがあります。その場合は手術治療を行います。手術では顔面神経を取り囲む神経の覆いを取り除き、開放することで、絞扼(締め付けられ圧迫されること)を解除する治療法があります。
院長コメント
顔面神経麻痺はステロイド点滴治療が必要になることもあり、総合病院の耳鼻科や脳神経外科で治療することが多い疾患です。眼科では顔面神経麻痺後に残存する眼輪筋麻痺による兎眼(目が閉じられなくなることで生じる乾き目)の治療を行います。点眼治療だけでは改善しきらず、涙点プラグの挿入が必要になることもあります。当院でも取り扱いしておりますので、いつでもご相談ください。