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「はやり目」(流行性角結膜炎)

「はやり目」とは

「はやり目」で知られる流行性角結膜炎は、強い感染力を持ったウイルスによる目の感染症です。
目やにや涙を介して感染していくため、家族内や幼稚園、施設内で流行することがあります。
潜伏期間は1週間程度で、充血や目やに、流涙やまぶたの腫れなどもみられます。
黒目が濁って、ものがかすんで見えることもあります。

感染力が非常に強いので両眼に発症しやすく、また周りの人にも感染していきます。
目やにが出ている間は学校に登校したり、人と接する職場や衛生的な環境を必要とする職場で仕事をしたりすることは避けなければなりません。

「はやり目」の症状

目が充血する

白目が血走ったように赤くなります。
これは目の血管が拡張して太くなるためです。
一般的に花粉症などよりも強い充血が見られます。

目やにが出る

目の表面に粘り気のある分泌物が出ます。
「はやり目」の結膜炎ではサラサラしたタイプ(漿液性)の目やにが出ることが多いです。

涙が出る

「はやり目」による強い炎症が、目の表面を刺激して涙を過剰に分泌させます。

視界がかすむ・ぼやける

前述の通り涙目になることや、目の表面(角膜)が白く濁ることで視界が霞んで見えたり、ぼやけてみえたりします。

白目がブヨブヨしている・目がコロコロする

炎症反応により白目がブヨブヨしているように感じます。
そのせいで目がコロコロして異物感を自覚します。

「はやり目」の原因

アデノウイルスが目に感染することが原因です。
アデノウイルスは、ヒトに感染するウイルスの一種で、50種類以上の型が知られています。
流行性角結膜炎の原因となるアデノウイルスの型は、主に8型、19型、37型、53型、54型、56型です。
空気感染はしませんので同じ部屋にいるからといって感染するわけではありません。
発症している方が目をこすり、ウイルスがついた手でドアノブやタオルなどを触った場合、それが感染源となり他の人にも接触感染します。

「はやり目」の治療

はやり目を引き起こすアデノウイルスに対する有効な治療薬はありませんが、2週間程度で自然治癒することが多いです。
弱った目にウイルス以外の細菌感染を起こさないために抗菌薬を使用していただくこともあります。
もともと自然治癒傾向のある病気でありますが、症状が収まる頃に目の表面が白く濁ってしまう患者様がいらっしゃいます。
これを角膜点状上皮下混濁といいます。
この場合、視力障害が長引くことがあります。
治癒するまで、炎症を抑えるステロイドの点眼を使用いただきます。

院長コメント

感染力が非常に強いため、周囲への感染対策が最も重要です。
涙液からウイルスを検出する検査を行い約10分程度で結果がわかります。
陽性であった場合は、症状が完全に消えるまでは感染拡大に注意しましょう。
ただし検査が陰性であったとしても、100%大丈夫というわけではありませんので注意してください。

当院での「はやり目」の治療

強い充血のある方(特に同居人に同じ症状がある方)はまず「はやり目」を疑います。
以前はまぶたの内側を綿棒でかなり強くこすり、ウイルスを含んだ組織を採取する必要がありました。
ここ最近では試験紙を涙に数秒浸すだけでよい検査キットも開発されましたので、検査をずいぶん楽に受けられるようになりました(当院でもこちらを採用しています)。
学校への登校は学校保健安全法によって禁止されており、医師が周囲への感染の恐れが無いと判断するまでは登校できません。
診断を受けた場合は、周囲の方へ感染させないためにも治癒するまで受診いただきたいと思います。

「はやり目」に関するよくある質問

Q:他の方にうつさないためにはどうしたら良いでしょうか?

A:感染力が非常に強いため、症状があるうちは他人との接触をできるだけ避けるべきです。
そして目を触ったらすぐに石鹸と流水で手洗いすることを徹底しましょう。
タオルや枕、ドアノブなども感染源となるので、共用は避けるようにしましょう。

Q:アルコール消毒で問題ないでしょうか?

A:「はやり目」の原因であるアデノウイルスは、ウイルスの構造上アルコール消毒に比較的強い抵抗性を持っています。
そのため、アルコール消毒のみでは、ウイルスを完全に除去することはできません。
次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)による消毒が有効とされています。
ちなみによく使用される消毒用エタノールでは80%の濃度でも10分以上作用させないと効果がありません。
もし消毒用エタノールしかない場合は、できるだけ手洗いでウイルス量を減らしてから使用しましょう。

Q:タオルやドアノブ、机についたアデノウイルスは何日くらい感染力がありますか?

衣類など凸凹の多い表面では、8~12時間。テーブルやドアノブなど平らな面では、24~48時間といわれています。
実は目に見えていないだけで、生存し続けているのです。
こまめに消毒することが感染予防には重要です。

Q:保育園や幼稚園、小学校は休んだほうが良いでしょうか?

A:「はやり目」は、学校保健安全法の第三種学校伝染病に指定されています。この法的根拠により、医師が周囲への感染力がなくなったと判断するまで学校(幼稚園も含む)への出席は停止することになります。
保育園などは学校の範疇ではないのでそれぞれの園に確認が必要ですが、非常に感染力が強いので前述のルールに従うべきでしょう。

Q:仕事は休むべきでしょうか?

A:成人の場合は学校保健安全法のような法的根拠はありません。
しかし、他人と接触する機会の多い接客業、医療施設、教育機関などは職場の内規によって出席停止が義務付けられている場合があります。
感染拡大防止を第一に考えて行動するようにお願いいたします。

Q:いつから復帰できるの?

A:「医師が感染の恐れがないと判断するまで」とされており、明確な規定はありません。
当院では充血や眼脂などの症状が完全に消失するまでとしています。
発症してから治癒まで、おおよそ2週間はかかると思います。

文責

日本専門医機構認定 眼科専門医 
竹本俊旭

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