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糖尿病網膜症

糖尿病網膜症とは

日本人全体の糖質消費が多くなり、糖尿病患者が増えています。
日本では予備軍を含めると8人に1人が糖尿病の危険があると言われています。
そして、糖尿病の患者様の30-40%の方が、程度は様々ですが糖尿病網膜症を発症すると言われています。糖尿病は他にも白内障や緑内障の原因となります。

糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の血管がダメージを受け血管の詰まり、出血などを引き起こした状態をいいます。
初期には自覚症状が全くありません。
進行具合によって単純糖尿病網膜症(軽症)→増殖前糖尿病網膜症(中等症)→増殖糖尿病網膜症(重症)と診断されます。
進行した糖尿病網膜症となって初めて症状が出るため、糖尿病のある方は眼科に定期受診する必要があります。

最重症の糖尿病網膜症となると、治療に大掛かりな手術が必要なうえ、手術で最善を尽くしても視力が出ないような状態となります。

糖尿病網膜症の分類

糖尿病網膜症の進行具合によっていくつかのステージに分けられます。

1.単純糖尿病網膜症(軽症)

糖尿病網膜症の初期段階です。網膜にある毛細血管が障害され始め、毛細血管に小さな「こぶ」ができたり、血管の壁から血液が滲み出して点状・斑状出血が生じたり、血液中の血漿成分が滲み出して白い沈着物(硬性白斑といいます)を形成します。

2.増殖前糖尿病網膜症(中等症)

毛細血管の障害が進行し、血管が詰まり始めます。
血管が詰まることで、網膜の一部に血流がない部分が生じてきます。
血液の流れが悪い部分の細胞が変化し軟性白斑と呼ばれる白い病変が生じます。
また血管が閉塞し、網膜虚血などが生じます。
ここでも自覚症状がない場合が多いです。

3.増殖糖尿病網膜症(重症)

血管が閉塞した状態が続き、血が足りなくなってしまった網膜は何とかその機能を保とうとして様々な変化を引き起こします。
その一つが、「新生血管」と呼ばれる血管です。この血管は突貫工事で作り上げた間に合せの血管ですので、非常にもろく出血しやすい状態にあります。
「新生血管」が破れると眼球内に出血が広がり、「硝子体出血」という状態になり、重篤な視力低下を来します。
また、新生血管の周囲には「増殖膜」という組織が生じ、これが網膜を引っ張り上げるような状態となると「網膜剥離」という失明につながる恐ろしい病気を引き起こします。

糖尿病網膜症の症状

単純糖尿病網膜症(軽症)

自覚症状はほぼありません。

増殖前糖尿病網膜症(中等症)

こちらも自覚症状があることはほぼありません。網膜が腫れてしまう「糖尿病黄斑症」が生じている方は視力が低下します。

増殖糖尿病網膜症(重症)
  • 視力低下:出血や網膜の腫れによる視力低下が生じます。
  • 飛蚊症:目の中のゼリー(硝子体)へ出血すると視界に影が見えます。
  • ものが歪んで見える:目の奥が腫れたり、増殖膜が張ったりすると網膜が歪みます。
  • 視界の異常:目の奥に異常な膜(増殖膜)がはった場合は網膜剥離という失明につながる病気の原因となります。視界がかけたり、強い飛蚊症を自覚したりします。

糖尿病網膜症の原因

血糖値が高いことが原因です。
血液中の過剰なブドウ糖はあらゆる血管の細胞を傷つけます。
目も血管が血液を運ぶことによって栄養をもらって生かされています。
その大事な血管が傷つくことで血流障害が生じ、網膜に様々な異常を引き起こします。

糖尿病網膜症の治療

まず何よりも大切なことは、糖尿病が悪化しないように食事・運動・お薬によって治療を継続することです。
糖尿病のコントロールが良好であれば、糖尿病網膜症の進行を抑えることができます。
そのため、糖尿病の患者様は、定期的に内科に通院いただき血糖値や血圧、脂質値などを測定してもらう必要があります。

レーザーによる治療(レーザー光凝固術)

この治療は中等症~重症の糖尿病網膜症に対して有効です。
中等症以上は網膜の血流が途絶えてしまっているため、放置していると新生血管が出現し重症の糖尿病網膜症へ悪化します。
そうならないために、血流が無い場所にレーザーをうち、網膜の機能を落とし血流の需要と供給のバランスを整えてあげる必要があります。

手術による治療(硝子体手術)

こちらは重症な糖尿病網膜症(増殖糖尿病網膜症)に対して行われます。
新生血管が破れて出血を起こしている場合は、目の中の出血をとる手術が必要です。
増殖膜を生じている場合は、増殖膜を剥がし網膜への牽引を解除する手術が必要となります。
これにより網膜剥離へ進行することを防ぎます。これらの手術は合併症のリスクも高く、手術が必要とならないためにも定期検査・血糖コントロールがとても大切です。

抗血管新生薬療法(硝子体注射)

糖尿病網膜症を発症している患者様の中には、網膜が腫れてしまう「糖尿病黄斑浮腫」という状態になっている方がいらっしゃいます。
この状態になると視力低下や歪んでものが見える症状(歪視といいます)が出現します。
この原因となっている物質を抑える働きのもつお薬を目の中に注射をします。
目の中にダイレクトに薬剤を届ける事ができるため、目薬よりも遥かに効果があります。

院長コメント

眼科の病気の中で初期に症状が出にくいものは糖尿病網膜症、緑内障です。
しかしこの両者とも患者様が多いにも関わらず、進行を放置されていると失明につながる怖い病気です。
自分では大丈夫であると思っていても病気が隠れている場合があります。
当院では「眼の健診」も実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

当院での糖尿病網膜症の治療

糖尿病と診断されている方は、放置せずに眼科を受診しましょう。
眼底検査を行い、糖尿病性網膜症の有無をチェックします。
糖尿病網膜症がどれだけ進行しているかを評価し、適切な診察期間で経過観察を行います。

必要に応じてレーザー治療などを行います。
当院では比較的痛みが出にくいと言われている「パターンスキャンレーザー」を導入しております。
また網膜の腫れがある患者様には硝子体注射も行っております。
硝子体出血や増殖膜といった手術が必要な状態の患者様は、硝子体手術ができる連携施設へ紹介とさせていただきます。
手術に対して不安なことや、相談したいことは当院でもお答えすることができますので、遠慮なくおっしゃってください。

文責

日本専門医機構認定 眼科専門医 
竹本俊旭

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