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色覚異常

色覚異常とは

モノを見る細胞を視細胞といいます。この視細胞は「赤色に敏感なタイプ」「緑色に敏感なタイプ」「青色に敏感なタイプ」の3種類があります。この3種類の視細胞の反応によって、人間は色を認識することができます。色覚異常とはこの3種類の細胞のいずれかがうまく機能せず、色を識別しにくくなる状態をいいます。3種類のうちのどれが機能していないかで、色の感じ方が異なります。色覚異常は遺伝性のものが多く、男性の方が発症しやすいです。日本では男性の約20人に1人、女性の500人に1人が何らかの色覚異常があると言われています。

先天色覚異常の種類

色覚異常は「どの色に弱いか」または「感じることができない」のかで「○型△色覚」という名前で分類されます。「○型」の部分は赤色を感じるL-錐体異常で「1型」、緑色を感じるM-錐体異常で「2型」、青色を感じるS-錐体異常で「3型」とされます。「△色覚」の部分は何種類の錐体または杆体細胞が機能しているかで決定されます。例えば特定の色には弱いが識別できる場合は3色覚。全く識別できない場合は2色覚と呼ばれます。1型と2型が多く、これらを総称して先天赤緑色覚異常といいます。最も多い病型は2型3色覚です(緑の識別に弱い)。

色覚異常の検査

石原式色覚異常検査表

石原式色覚異常検査表は、色覚異常の有無を調べるスクリーニング検査です。モザイク状に並んだ色の中から、数字や記号を読み取ることができるかどうかを検査します。具体的には、下図のように、モザイク状に色のついた点が配置された検査表を、一定の距離から見ます。色覚異常がある場合は、正常な人には見える数字や記号が見えなかったり、見えても読み取れなくなったりします。

パネルD-15テスト

色覚異常の程度を検査します。何色に弱いのか、どれくらい弱いのかをチェックします。15色の色パネルを、基準となる色に近いものから順番に並べていきます。色覚異常がある場合は、正常とは違った並べ方になります。具体的には、15色の色パネルがバラバラ状態で被検者に渡されます。一番端の基準となる色に近い色のパネルを順番にケースに並べていきます。検査時間は約2分です。

アノマロスコープ

色覚異常の確定診断に用いられます。機械をのぞき込み、円の上半分と下半分の色が同じかどうか答える検査です。ただし非常に稀な3型色覚の評価には向かないとされています。

色覚異常の原因

先天色覚異常の場合

先天性色覚異常の原因は、遺伝によるものです。人間の性染色体には、X、Yの2つがあり、男性はX Y、女性はXXの組み合わせになっています。色覚異常の遺伝子はX染色体にあり、男性の場合はその染色体に色覚異常の遺伝子があれば発症します。女性の場合はX染色体が2個あるので、その両方に色覚異常の遺伝子がある場合に色覚異常となり、1個のX染色体にのみ遺伝子がある場合には発症しませんが、保因者になります。

後天色覚異常の場合

1.網膜病変

網膜は目の奥にある光を感知する組織です。加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などの網膜病変は、網膜に障害が起き、網膜の錐体細胞が損傷を受けるため色覚異常が生じることがあります。

2.視神経病変

視神経は目の奥にある光の情報を脳に伝える神経です。視神経炎や抗結核薬などによる視神経症といった視神経病変は、視神経に障害をもたらし錐体細胞からの情報伝達が障害されるため、色覚異常が生じることがあります。

3.大脳性病変

大脳は色覚情報を処理する部位です。大脳性病変とは、大脳に障害が起こる病気です。大脳性病変の代表的な疾患としては、脳卒中、脳腫瘍などが挙げられます。これらの疾患では、大脳の色覚情報処理機能が障害されるため、色覚異常が生じることがあります。

4.水晶体混濁

加齢によって水晶体が黄色く濁る(白内障)と、赤や緑の光が吸収されやすくなります。そのため、赤と緑の区別がつきにくくなる色覚異常が生じることがあります。

色覚異常でこまる場面

日常生活

雨が降っていたり、夕暮れ時、あるいは信号が点滅していたりするなどの悪条件が重なると、信号を読み間違う危険があります。他にも焼き肉を食べるとき、その焼け具合が分かりにくいことなども挙げられます。

車の運転

例えば1型色覚では、赤の錐体細胞の機能が低下しているため赤が薄暗く見えます。そのためバイクや車を運転するようになると、条件が悪い場合には前の車のテールランプに気づきにくいことがあります。

色覚異常の治療

治療方法はありませんが、自分の個性として自覚し受け入れることが大切です。「色覚異常で困る場面」で例を挙げたものも、自覚して気をつけていれば危険を回避することができます。例えば焼肉の例では、周囲の方に焼き加減をまかせることで解決します。信号も色だけで判断するのではなく、「周りの人が止まっている」という周囲の状況にも注意を払うことで危険を回避できます。

院長コメント

色覚異常は決して白黒の世界で生きているというわけではございません。色の感覚が大多数の方と異なるだけで、しっかりモノが見えています。今後の生活や過ごし方などで不安な気持ちがあると思います。何でも相談に乗りますので診察の時におっしゃってください。

色覚異常についてよくある質問

Q:色覚異常を持つ子供とどうやって接すると良いですか?

A:まずは、どの色の識別が苦手か知ることが大切だと思います。どういう時に、どういう注意をすればよいかが分かっていれば、普段の生活や仕事で困ることはほとんどありません。ときにお絵かきの時間などで色使いがおかしいこともあると思います。子供の色間違いを否定せず、個性として認めてあげてください。また「色の名前」を教えてあげることで、見え方は違っても周囲の会話と食い違うことを避けられる場合があります。

Q:学校生活で気をつけることはありますか?

A:担任の先生には伝えておいた方が良いでしょう。あってはならないことですが、強度の色覚異常の子どもの色づかいが異なるのを見て、それを色覚異常とは考えずに「ふざけている」「集中していない」などと誤解されてしまうと、子どもは戸惑ってしまいます。

Q:将来、就けない職業はありますか?

A:瞬時に信号灯の色の判断を求められるような航空機のパイロットや鉄道運転士、船舶航海士には残念ですが就職できません。自衛官、警察官などは、色覚異常の程度によっては就職できない場合があります。なお、自動車の普通運転免許はほとんどの場合、取得可能です。就職の可否は細かい変更があることが多いため、職業適性についてはその都度確認する必要があります。

Q:間違いやすい色を教えてください。

A:以下の組み合わせが、混同しやすい色とされています。

文責

日本専門医機構認定 眼科専門医 
竹本俊旭

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